カンボジア不動産投資|特徴・リスク・不動産会社の選び方
カンボジア不動産投資を検討するとき、最初に区別したいのは「土地を所有できるか」と「コンドミニアムの住戸を取得できるか」です。日本人が土地を直接所有することはできませんが、法令上の条件を満たす共同所有建物では一定の区分所有権を取得できます。一方、完成遅延・空室・売却の難しさなど、日本国内とは異なるリスクもあります。
本記事では、プノンペンの住宅需要、外国人の所有制限、実際の収支、税金、管理会社・不動産会社の選び方を、購入前の確認事項として解説します。経済成長率だけで投資の成否を判断せず、物件単位の数字と契約内容を比較しましょう。
日本人がカンボジア不動産へ投資する場合は、①外国人が取得できる権利か、②ストラタタイトル等の登記が可能か、③デベロッパー・建設進捗・引渡条件、④実際の賃貸需要と管理体制、⑤税金・送金・日本側申告、⑥将来の買い手と売却方法、まで購入前に確認することが重要です。「経済成長国だから値上がりする」という理由だけで判断しないようにしましょう。
2026年のカンボジア経済と不動産投資環境
①カンボジアにおけるGDPの推移
カンボジアの実質GDP成長率
2025年の推計値と、世界銀行の2026〜2027年見通しです。
世界銀行の2025年実質GDP成長率の推計値は5.3%です。一方、2026年6月の世界銀行「Cambodia Economic Update」では、2026年の実質成長率を3.9%と予測し、不動産部門の低迷や不良債権の増加にも言及しています。
国全体が成長していても、コンドミニアム価格・賃料・空室率が同じ方向に動くとは限りません。投資判断では、マクロ成長率と対象物件の需給を分けて考える必要があります。
②カンボジアにおける人口動態
カンボジアの人口推移
2021年から2025年まで人口増加が続いています。
世界銀行によると、2025年のカンボジア人口は17,847,982人、人口増加率は1.2%でした。人口増加は住宅需要を考える材料の一つですが、外国人投資家向けコンドミニアムの賃貸需要と同じではありません。
プノンペンでもBKK1、Tonle Bassac、Diamond Island、郊外などで入居者層・賃料・供給量は異なります。購入前に、同じ建物や周辺の実際の募集賃料・空室・中古売出し件数を確認しましょう。
③カンボジアにおける都市化率の推移
都市人口比率の推移
都市部に住む人口の比率は、2000年の18.6%から2025年には約41.1%まで上昇しています。
出典:World Bank「Urban population (% of total population) – Cambodia」
経済産業省のレポートによると、2000年時点ではカンボジアの8割以上が農村部で都市部は18.6%にとどまっていました。
その後も都市化は進んでおり、長期的には都市部人口の比率が高まる方向と見込まれています。
都市化は住宅・オフィス需要を支える要因の一つですが、供給が需要を上回る局面もあります。開発計画の多さだけで判断せず、実際の成約・賃料・入居状況を確認することが重要です。
カンボジアにおける不動産市況のまとめ
カンボジアは人口増加と経済成長が続く一方、2026年時点では不動産部門の低迷や外部環境の変化にも注意が必要です。人口・GDPといった国全体の数字だけでなく、投資対象エリアの供給量、実需、賃料、売却時の流動性まで確認して判断しましょう。
プノンペンの不動産価格・賃料・空室をどう確認する?
以前この記事では2022年のCBREデータを使って、プノンペンの高級住宅・戸建て価格や供給計画を紹介していました。しかし、2026年の投資判断に2022年の価格推移だけを使うのは適切ではないため、古いグラフは外しました。
世界銀行は2026年6月時点でカンボジアが不動産部門の低迷に直面していると指摘しています。銀行部門の不良債権比率も2025年に8.9%へ上昇したとされ、不動産市場のストレスが金融面にも表れています。
購入時は、販売会社が示す想定利回りだけではなく、次の数字を確認してください。
| 賃貸 | 同じ建物・同タイプの実際の募集賃料、空室期間、管理費、家具交換費 |
|---|---|
| 供給 | 周辺で建設中・販売中の競合コンドミニアム、今後の引渡し予定 |
| 中古流通 | 同じ建物の中古売出し件数、売出価格、実際に成約するまでの期間 |
| 管理 | 管理会社、修繕積立・管理費、共用部の状態、賃貸管理契約の条件 |
| 出口 | 現地居住者・外国人投資家のどちらが買い手になるか、売却時の仲介・送金方法 |
想定利回りを鵜呑みにしない|賃貸収支の計算例
カンボジアのコンドミニアム投資では、販売資料の「想定利回り」だけでなく、空室・管理費・修繕費を差し引いた運用収支を確認しましょう。下記は計算方法を示す仮定の例であり、プノンペンの実際の相場や家賃を示すものではありません。
仮定:購入価格10万米ドル・家賃月600米ドル
7.20%
600ドル × 12か月 ÷ 100,000ドル
3.97%
空室と年間経費を差し引いた収支で計算
| 家賃収入(空室1か月を想定) | 6,600ドル |
|---|---|
| 賃貸管理料(入金額の8%) | −528ドル |
| 共用管理費・修繕予備費 | −1,700ドル |
| 保有税・保険等(仮置き) | −400ドル |
| 運用収支(税引き前の概算) | 3,972ドル |
※購入諸費用、家賃にかかる税金、日本での納税、借入返済、売却諸費用、為替変動等は含んでいません。保有税の400ドル等は現地税額の見積りではなく計算用の仮定です。実際の投資利回りは購入総額と実経費を使って再計算してください。
利回りの比較では、同じ建物・同面積の募集賃料と成約賃料の差、空室期間、送金・為替コスト、賃貸管理の契約内容も確認します。特に「一定期間の家賃保証」は、保証事業者の信用力、免責、減額条件、更新条件まで契約書で確認しましょう。
カンボジアのコンドミニアム購入は、権利と建物を分けて確認する
販売資料に「外国人購入可能」と書かれていても、購入者が取得する権利と実際の住戸の登記を確認する必要があります。カンボジアでは外国人個人が土地を直接所有することはできず、法令上の条件に合う共同所有建物で上階の私有住戸を取得する方法が中心です。
1.建物・住戸の権利
共同所有建物としての登録状況、ストラタタイトル、取得できる階・住戸、外国人保有枠、売主の権利を確認。
2.完成と引渡し
建築進捗、土地・開発権利、支払時期、仕様変更、引渡遅延と契約解除・返金条件を確認。
3.保有中の管理体制
賃貸募集、空室、家具家電の補修、家賃回収、管理費、税金、オーナーへの月次報告を確認。
4.中古での売却
周辺中古の募集戸数・成約価格、現地買主への販売方法、売却時の手数料・税・送金を確認。
CDC(カンボジア開発評議会)の投資ハンドブックでも、外国人のコンドミニアム取得と土地所有制限を分けて説明しています。法令上の一般的な保有比率だけで判断せず、対象の建物と住戸の登記・制限を調べましょう。CDCの土地制度・関連法令。
外国人が購入できる不動産と所有権の制限
①土地の所有はできない
カンボジア憲法・土地法では、外国人個人や外国法人は土地を直接所有できません。土地を所有できる「クメール法人」は、原則としてカンボジア人またはカンボジア法人が51%以上を保有する法人です。
外国人が49%以下を出資した会社であれば自動的に土地を自分のものとして自由に扱える、という意味ではありません。名義だけを借りるようなスキームには法的リスクがあるため、土地付き物件を検討する場合はカンボジアの弁護士等へ所有構造を確認してください。
Council for the Development of Cambodia(CDC)土地制度
②コンドミニアムの購入は可能
外国人は、法令上の要件を満たした共同所有建物(co-owned building)の私有部分を取得できます。実務上は、ストラタタイトルを取得できるコンドミニアム等が代表例です。
外国人が所有できるのはground floor(地上階)と地下階を除く上階の私有部分で、建物内の外国人保有比率には70%の上限があります。土地そのものを外国人が所有するわけではありません。
購入時は「コンドミニアムだから大丈夫」と判断せず、対象住戸が外国人名義で正式にストラタタイトルを取得できるか、建物自体が共同所有建物として登録されているか、既存の外国人保有比率が上限に達していないかを確認してください。
③融資・分割払いの条件は物件ごとに確認する
海外投資家向けにデベロッパーの分割払い等が提示される場合がありますが、金利・頭金・期間・担保・遅延時の扱いは商品ごとに異なります。
以前のこの記事では「銀行ローン7〜12%」「デベロッパーローン18%」「100%融資」など一時点の条件を紹介していましたが、2026年の一般条件として使える数字ではないため削除しました。
資金調達を利用する場合は、総支払額、金利、通貨、繰上返済条件、完成遅延時にも支払いが続くかなどを契約書で確認しましょう。
④プレビルド物件が多い
完成前(off-plan/pre-build)の物件は、完成済み中古物件より低い販売価格や分割払いが設定される場合があります。一方、完成遅延、仕様変更、デベロッパーの資金繰り、プロジェクト中止、タイトル取得の遅れなどのリスクがあります。
購入前に、土地・建物の権利関係、開発許認可、デベロッパーの完成実績、工事進捗、支払先、返金条件、引渡し期限、遅延時の条項、完成後に取得するタイトルの種類を確認してください。「完成すれば値上がりする」ことを前提にしないことが重要です。
⑤管理会社が超重要
海外不動産では、購入後の賃貸管理体制が収益と物件状態に大きく影響します。
デベロッパー指定の建物管理会社と、室内の賃貸管理を行う会社は別の場合があります。入居募集、契約、家賃回収、滞納対応、修繕、家具交換、退去精算、税金・公共料金の支払い代行、オーナーへの報告内容を確認しましょう。
購入会社から紹介された管理会社だけで決めず、管理料、客付け手数料、修繕時の上乗せ、送金手数料、解約条件、実際の管理戸数などを比較することが重要です。
カンボジア不動産の主な税金【2026年確認】
税制は変更や優遇措置があるため、以下は一般的な制度の整理です。実際の購入・保有・売却では、カンボジアと日本双方の税務専門家へ確認してください。
| 所有権移転にかかる印紙税等 | 一般則では不動産の所有権・占有権移転に4%の税率。時期・物件によって免税・優遇措置が出ることがあります。 |
|---|---|
| 不動産税 | 年0.1%。単純な購入価格×0.1%ではなく、税務上の評価額を基にした課税標準で計算されます。GDTの一般説明では、(不動産価値×80%)から1億リエルを控除した金額が課税標準です。 |
| 賃貸不動産税 | GDTの一般案内では総賃料の10%。納税者区分等によって扱いが異なるため、現地税理士等へ確認が必要です。 |
| キャピタルゲイン税 | 20%の制度枠組みがありますが、不動産については2026年1月2日付で実施延期の通知が出ています。売却時点の最新GDT通知を必ず確認してください。 |
日本の財務省が2026年10月1日時点で公表する租税条約ネットワークにカンボジアは含まれておらず、日・カンボジア間の包括的な租税条約は発効していません。日本居住者は、日本側での所得申告や外国税額控除の可否も含めて税理士へ確認してください。
カンボジア不動産会社を選ぶときの確認ポイント
海外不動産では、「日本語で話せる」「大手ブランド」「セミナーで紹介された」という理由だけで会社を選ばず、現地の不動産ライセンス、オフィス、売買後の管理、タイトル移転、税務・送金、売却時のサポートまで確認しましょう。
| 現地資格・ライセンス | 不動産仲介・管理のライセンス番号、現地法人・支店の実在を確認 |
|---|---|
| タイトル確認 | ストラタタイトル取得可否、既存権利、抵当・差押え等の確認体制 |
| 販売後 | 入居募集、家賃回収、修繕、税・公共料金、オーナー報告 |
| 売却 | 中古売買の実績、現地買主・外国人買主への販売チャネル |
| 利益相反 | デベロッパーからの販売報酬、家賃保証条件、紹介料などを確認 |
以下は、2026年10月時点で日本語サイトとカンボジア拠点の稼働を確認できた事業者の例です。掲載は特定会社への投資推奨ではありません。
①富士リアルティ株式会社 カンボジア支店
富士リアルティ カンボジア支店は、2026年10月時点でもプノンペンで売買仲介・賃貸仲介・賃貸管理を行っています。公式会社概要では、Real Estate Agent License「E-14-160」、Real Estate Management License「PM-21-031」を掲載しています。
所在地:193Eo, Street 63, Sangkat Boeung Keng Kang 1, Khan Boeung Keng Kang, Phnom Penh。
実際に利用する場合は、購入予定物件の販売会社との関係、管理契約、売却時のサポート範囲、費用を個別に確認してください。
②アンナアドバイザーズ株式会社
アンナアドバイザーズは東京とプノンペンに拠点を持ち、売買・賃貸・不動産投資関連のサービスを提供しています。
2026年5月にプノンペンオフィスをTonle BassacのMaline Officeへ移転しており、現住所は「Maline Office 1st Floor, 162 Preah Norodom Blvd, corner of Street 466, Tonle Bassac, Phnom Penh」と案内されています。
同社に限らず、販売会社が提示する家賃保証・想定利回り・将来価格は保証条件や前提を確認し、第三者の相場情報とも比較して判断しましょう。
「利回り保証」を購入判断に使う前に確認したいこと
想定賃料や家賃保証が提示されていても、一定期間だけの販売促進策か、実際の入居実績に基づくものかで意味が変わります。保証契約の相手方、支払原資、期間、免責、途中解除、保証終了後の賃貸需要まで確認しましょう。
例えば購入後に入居が決まっても、現地通貨・米ドルと円の為替、修繕、家具家電、管理手数料、税金、送金費用によって収益は変わります。購入判断では、販売会社の表面利回りと、費用を差し引いた年間の手取りを分けて見ることが重要です。
海外不動産の比較記事では直接購入と小口出資の違い・会社に聞く7つの質問も紹介しています。カンボジアの案件では、購入会社とは別の現地専門家から権利と契約を確認する方法も検討してください。
カンボジア不動産投資のよくある質問
Q.日本人はカンボジアの土地を所有できますか?
日本人を含む外国人は、原則として土地を直接所有できません。取得できる権利を土地付き物件とコンドミニアムで混同しないようにしましょう。名義借りや法人を介する場合も、権利関係を現地の独立した法律専門家に確認する必要があります。
Q.コンドミニアムなら外国人でも必ず購入できますか?
必ず購入できるわけではありません。共同所有建物の登録、地上階・地下階の制限、外国人保有比率の上限、売主の権限、ストラタタイトル取得可能性など、住戸ごとの確認が必要です。
Q.「想定利回りが高い物件」なら有利ですか?
表面利回りは、空室・管理費・修繕・税金・送金費用を反映していない場合があります。上の収支シミュレーションのように、購入額と年間の実収支を分けて計算しましょう。高い家賃保証率が示されても、保証条件や終了後の賃貸需要を確認する必要があります。
Q.プノンペンの物件はどのエリアも同じように貸せますか?
いいえ。立地・物件価格・競合供給・入居者層によって賃貸需要は異なります。周辺の募集情報だけではなく、可能なら同じ建物での入居実績、空室期間、成約賃料、中古売却の実績を確認してください。
まとめ
カンボジアは2025年に5.3%の経済成長を記録しましたが、世界銀行は2026年の成長率を3.9%と予測し、不動産部門の低迷にも注意を促しています。
外国人は土地を直接所有できませんが、一定の共同所有建物では、ground floor・地下階を除く上階の私有部分をストラタタイトルで取得でき、外国人保有比率には70%の上限があります。
投資時は、経済成長や販売会社の想定利回りだけではなく、タイトル、外国人保有枠、完成リスク、賃貸需要、管理費、税金、管理会社、中古売却の流動性、日本への送金・申告まで確認しましょう。
