大気汚染防止法の段階的な改正により、令和4年4月1日より、一定規模以上の工事については、アスベストの有無に関わらず、アスベストの調査結果を報告することが義務付けられました。
これは解体工事以外の、給湯器やエアコンなどの設備工事においても、台数がまとまって行う工事については、報告が必要となり、賃貸不動産経営管理士にとっても、非常に重要な法改正となります。
例えば、賃貸不動産経営管理士において、賃貸マンションの改修工事を提案する際に、ある程度まとまった金額や床面積になる場合は、設備工事費用だけではなく、アスベストの調査費用、さらにはアスベストの含有が確認された場合には、その除去、封じ込めまたは囲い込みを行う費用がかかります。
今回の改正は、賃貸マンションの運営収支にも大きな影響を与えるため、その管理のプロである賃貸不動産経営管理士にも大変重要なポイントとなります。
また、こういった改正は賃貸不動産経営管理士試験にも出やすいので要チェックです。今回は、その改正ポイントを詳しくみていきたいと思います。
大気汚染防止法とは
大気汚染防止法とは、昭和43年に大気汚染による国民の健康を害さないように、制定された法律です。
主には以下の通り。
①ばい煙の排出規制
②揮発性有機化合物の排出抑制
③粉じんの排出規制
④有害大気汚染物質の対策の推進
その後もアスベストに関する法律は厳しくなり、2006年9月にはアスベストの使用は全面的に禁止されました。
アスベストとは
アスベスト(石綿)は、安価で耐火性、耐熱性、防音性など建築材料としては優秀で、戦後多くの建築物で使用されてきました。
しかし、アスベストは極めて細かい天然の鉱物繊維で、肺に入り込むと、肺がんや悪性中皮腫(胸膜や腹膜にできる悪性腫瘍)などということが明らかになり、アスベストの使用は1970年代から規制されてきました。現在では新たな使用は一切禁止されています。
一定規模以上の工事・改修とは
今回の大気汚染防止法の改正で、賃貸不動産経営管理士として最も重要なのは、一定規模以上の工事・改修においても報告が必要となったことです。
大規模修繕や設備改修、リフォーム、原状回復といった工事においても、今後は都道府県に届出が必要となったことで、これまで解体業者や建設業者だけも問題であった大気汚染防止法が、賃貸マンションの管理においても一気に影響することとなります。
以下、一定規模以上の工事・改修においては、アスベストの含有有無に関わらず、事前調査結果を都道府県に報告する必要があります。
建築物の場合
■解体作業の対象となる床面積が80㎡以上の工事
■請負代金の合計額(消費税込)が100万円以上の改造・補修工事
工作物の場合
■請負代金の合計額(消費税込)が100万円以上の解体・改修・補修工事
※100万円以上の改造・改修工事については、原状回復工事費も含まれます。
賃貸不動産経営管理士が気をつけるべきポイント
賃貸不動産経営管理士は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」に定める賃貸事業を公正かつ円滑に運営するために、賃貸住宅管理業務を中心的に担っていくことを期待されています。
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そして、賃貸不動産経営管理士は、オーナーが賃貸住宅を円滑に運営していくため、維持・保全に関しても、適切なアドバイスをする必要があります。
今回の大気汚染防止法の改正は、大規模修繕、設備交換、リノベーションなどの一定規模以上の工事に関して、解体費用や調査費用が別途必要となる可能性が高いということになります。
大規模修繕を提案する際、今回の改定を知らずに、設備と工事費用のみの見積もりを提出してしまうと、あとで追加費用が発生した場合トラブルの原因にもなってしまいます。
アスベストの調査事項に関しては、賃貸不動産経営管理士としてしっかりと知識を身につけたうえで提案するようにしましょう。
報告が必要な事例
例1:戸建て住宅の解体
物件 | 戸建て住宅 |
---|---|
土地面積 | 100㎡ |
延床面積 | 85㎡ |
工事の種類 | 解体 |
報告の有無 | 床面積が80㎡を超えているため、都道府県に報告する必要があります。 |
例2:賃貸マンションのエアコンor給湯器交換工事
物件 | 賃貸マンション |
---|---|
工事内容 | エアコンor給湯器交換工事 |
請負金額 | 請負金額95万円(消費税込104.5万円) |
報告の有無 | 請負金額が100万円(消費税込)を超えているので都道府県に報告する必要があります。 |
備考 | エアコンは、家庭用エアコンの室外機の部品にアスベストが含まれていたことがあるため |
例3:賃貸マンションで、別々のフロアで同一の業者にリフォームを依頼した場合
物件 | 賃貸マンション |
---|---|
工事内容 | リフォーム |
請負金額 | 205号室の契約金額が60万円、602号室の契約金額が60万円、合計額が120万円を同一の業者に依頼 |
報告の有無 | 100万円(消費税込)を超えているので都道府県に報告する必要があります。 |
報告については、国が管理している「石綿事前調査結果報告システム」に電子申請する必要があります。申請するのは、解体業者やリフォーム業者などが行います。
令和5年10月以降は有資格者による事前調査が義務化
令和5年10月1日以降は、大気汚染防止法がさらに改正される予定で、内容としては解体等作業を行う際は、有資格者による事前調査が義務化されます。(事前調査において資格が必要となります)
有資格者とは、以下のとおりです。
①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者)
④令和5年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録されている者
まとめ
大気汚染防止法の改正は、解体業者やリフォーム業者だけではなく、賃貸不動産経営管理士においても非常に重要な法律改正です。
賃貸マンションの運営のプロである賃貸不動産経営管理士にとって、オーナーにリフォームや大規模修繕の提案をしていくことは、マンションの維持・保全を努めていくため必要不可欠なことです。
大気汚染防止法、いわゆるアスベストの法律はどんどん厳しくなっているので、足元で改正が進んでいるアスベストの法律に対し、しっかりと知識と準備をおこなったうえでオーナーに提案するようにしましょう。
こういった法律の改正は賃貸不動産経営管理士試験にも出やすいので、これから資格をとろうとする受験者にも要チェック事項です。