賃貸不動産経営管理士

大気汚染防止法の改正とは?石綿事前調査と賃貸不動産経営管理士試験

大気汚染防止法の改正と賃貸不動産経営管理士試験の重要ポイント
SPG

大気汚染防止法・石綿障害予防規則の改正により、建築物等の解体・改修工事では、工事規模にかかわらず原則として石綿(アスベスト)の事前調査が必要です。そのうえで、一定規模以上の工事は事前調査結果の報告も必要になります。

先に結論
建築物の解体・改修では、まず事前調査が必要です。報告義務が生じる主な基準は、建築物の解体で対象床面積80㎡以上、建築物の改修・補修で請負代金100万円以上、対象工作物の解体・改修で請負代金100万円以上です。建築物は2023年10月以降、一部工作物は2026年1月以降、原則として資格者による調査が必要です。

【2026年10月追記】建築物の事前調査は2023年10月から有資格者による実施が義務化され、さらに2026年1月1日以降着工の一部工作物についても資格者による事前調査が義務化されています。最新情報は厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイトをご確認ください。

解体工事だけでなく、リフォーム・修繕・設備工事などでも、工事部分の建材について石綿含有の有無を確認する事前調査が必要です。80㎡・100万円という数字は「事前調査をするかどうか」ではなく、「調査結果を報告するかどうか」の基準です。

制度は最新情報で確認

石綿規制は改正が続いているため、工事時点の最新法令・行政案内を確認することが重要です。

例えば、賃貸不動産経営管理士において、賃貸マンションの改修工事を提案する際に、ある程度まとまった金額や床面積になる場合は、設備工事費用だけではなく、アスベストの調査費用、さらにはアスベストの含有が確認された場合には、その除去、封じ込めまたは囲い込みを行う費用がかかります。

工事前確認建材・工事内容から事前調査の要否を確認
事前調査資格者等による建材の確認・判定
報告・届出対象工事は法令に沿って報告
除去等の対応含有時は適切な除去・封じ込め等を実施

今回の改正は、賃貸マンションの運営収支にも大きな影響を与えるため、その管理のプロである賃貸不動産経営管理士にも大変重要なポイントとなります。

また、賃貸住宅の維持保全や修繕を理解するうえで、石綿規制は押さえておきたい法改正の一つです。試験対策でも、古い数字を暗記するのではなく、現行制度の全体像を確認しておきましょう。今回は、その改正ポイントを整理します。

大気汚染防止法とは

大気汚染防止法とは、昭和43年に大気汚染による国民の健康を害さないように、制定された法律です。

主には以下の通り。

①ばい煙の排出規制

②揮発性有機化合物の排出抑制

③粉じんの排出規制

④有害大気汚染物質の対策の推進

その後も規制は強化され、2006年9月には石綿を0.1%を超えて含む製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が原則禁止となりました。一部の猶予対象も段階的に廃止され、2012年には猶予措置が撤廃されています。

アスベストとは

アスベスト(石綿)は、安価で耐火性、耐熱性、防音性など建築材料としては優秀で、戦後多くの建築物で使用されてきました。

しかし、アスベストは極めて細かい天然の鉱物繊維で、肺に入り込むと、肺がんや悪性中皮腫(胸膜や腹膜にできる悪性腫瘍)などということが明らかになり、アスベストの使用は1970年代から規制されてきました。現在では新たな使用は一切禁止されています。

一定規模以上の工事・改修とは

賃貸管理実務で重要なのは、事前調査の義務と、調査結果の報告義務を分けて考えることです。

大規模修繕や設備改修、リフォーム、原状回復などで建材を解体・改修する場合は、規模の大小にかかわらず原則として事前調査が必要です。そのうえで一定規模以上の工事については、元請事業者または自主施工者が石綿事前調査結果報告システム等を利用して報告します。

以下の規模に該当する工事は、石綿の有無にかかわらず事前調査結果の報告対象です。

建築物の場合

■解体作業の対象となる床面積が80㎡以上の工事
■請負代金の合計額(消費税込)が100万円以上の改造・補修工事

工作物の場合

■請負代金の合計額(消費税込)が100万円以上の解体・改修・補修工事

※100万円以上の改造・改修工事については、原状回復工事費も含まれます。

賃貸不動産経営管理士が気をつけるべきポイント

賃貸不動産経営管理士は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」に定める賃貸事業を公正かつ円滑に運営するために、賃貸住宅管理業務を中心的に担っていくことを期待されています。

そして、賃貸不動産経営管理士は、オーナーが賃貸住宅を円滑に運営していくため、維持・保全に関しても、適切なアドバイスをする必要があります。

大規模修繕、設備交換、リノベーションなどでは、工事内容に応じて石綿事前調査や分析調査、石綿が確認された場合の飛散防止措置等が必要になることがあります。そのため、当初見積もりでは工事本体だけでなく、事前調査や必要な石綿対策の費用も確認しておくことが重要です。

大規模修繕を提案する際、今回の改定を知らずに、設備と工事費用のみの見積もりを提出してしまうと、あとで追加費用が発生した場合トラブルの原因にもなってしまいます。

見積もりで確認すること

修繕・リフォームでは、工事本体だけでなく、石綿事前調査や必要な対策費が見積もりに含まれているかも確認しましょう。

アスベストの調査事項に関しては、賃貸不動産経営管理士としてしっかりと知識を身につけたうえで提案するようにしましょう。

報告が必要な事例

例1:戸建て住宅の解体

物件 戸建て住宅
土地面積 100㎡
延床面積 85㎡
工事の種類 解体
報告の有無 解体部分の床面積が80㎡以上のため、石綿事前調査結果の報告が必要です。

例2:賃貸マンションの設備改修工事

物件 賃貸マンション
工事内容 既存建材への切断・穿孔などを伴う設備改修工事
請負金額 請負金額95万円(消費税込104.5万円)
報告の有無 請負代金が100万円以上(消費税込)のため、石綿事前調査結果の報告が必要です。
備考 単純な機器交換か、建材への切断・穿孔等を伴う改修かによって扱いが異なるため、施工内容を確認する必要があります。

例3:同一の改修工事を、同じ業者と複数契約に分けた場合

物件 賃貸マンション
工事内容 同一の改修工事を複数契約に分割
請負金額 同一工事について60万円+60万円の2契約に分け、同一の業者へ依頼
報告の有無 同一の者が同一工事を複数契約に分けて請け負う場合は一つの契約とみなされるため、合計120万円として報告対象になります。

報告対象となる工事は、元請事業者が「石綿事前調査結果報告システム」を利用して電子報告します。報告にはGビズIDが必要です。

有資格者による事前調査が義務化

2023年10月1日以降着工の建築物の解体・改修工事では、原則として所定の資格者による事前調査が必要です。また、2026年1月1日以降着工の一部工作物の解体・改修工事についても、対象となる作業では工作物石綿事前調査者等による調査が必要になりました。

有資格者とは、以下のとおりです。

①特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)

②一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)

③一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者)

④令和5年9月30日以前に(一社)日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査時点でも引き続き登録されている者

※上記は主に建築物の事前調査者です。2026年1月1日以降着工の一部工作物では、対象に応じて工作物石綿事前調査者などの資格要件が適用されます。

まとめ

石綿対策で重要なのは、「事前調査は原則すべての解体・改修工事で必要」「一定規模以上になると調査結果の報告も必要」という2段階を分けて理解することです。

建築物では2023年10月から、一部工作物では2026年1月から、原則として資格者による事前調査が必要になっています。賃貸マンションの修繕・設備交換・原状回復を提案する際は、施工業者に工事範囲、事前調査、報告、石綿対策費の有無を確認したうえでオーナーへ説明しましょう。

制度は段階的に改正されているため、実際の工事では厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」や環境省「石綿事前調査結果の報告について」で最新情報を確認してください。

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