越境物がある土地は売れる?塀・雨樋・樹木の調査・覚書と売却方法
不動産エキスパート|売主の判断と準備に役立つ実務ガイド
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「ブロック塀が少し隣地へ出ている」「雨樋の一部が境界を越えている」「隣家の木が敷地へ伸びている」。売却前にこうした状況が見つかっても、すぐ『売れない土地』とは限りません。大切なのは、見つかった事実を曖昧にせず、誰が何をするかを買主と共有することです。
境界図・現地写真で対象を特定
隣地へ説明・是正や覚書を検討
買主へ資料を提示し契約に明記
越境物の種類で対応はどう違う?
| 越境の例 | 最初の確認 | 考えられる対応 |
|---|---|---|
| 自宅の塀が隣地へ | 塀の所有者・基礎の位置・撤去の可否 | 是正時期・費用負担を協議し売買条件へ反映 |
| 隣家の塀が自分の土地へ | 境界・塀の築造経緯と所有者 | 隣地との協議、覚書、買主への現状説明 |
| 雨樋・庇が境界を越える | 越境幅、排水の方向、補修の必要性 | 移設・補修、将来是正の合意などを検討 |
| 樹木の枝・根が境界を越える | 樹木の所有者・枝か根か・安全性 | 枝は原則として所有者へ切除を求める。根は別の扱い(民法233条) |
| 地中の管や塀の基礎 | 埋設位置・用途・共有利用の有無 | 図面・調査、使用権限や契約条件を専門家と確認 |
※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
なお、地中配管や塀の基礎は、地上の越境物と異なり現地で見えないこともあります。地中の物そのものの発見・調査・撤去費用や契約不適合責任は、地中埋設物がある土地を売却する際の注意点で詳しく解説しています。
まず「境界」と「越境物の所有者」を分けて調べる
土地の境界が不明確な状態と、境界は分かるが塀・庇などが越えている状態は異なります。確定測量図・境界標があっても、現況の構造物の位置が適切とは限りません。反対に、古い塀の中心が必ず境界というわけでもありません。
- 法務局で取得できる地積測量図や既存の確定測量図を確認する
- 境界標・塀・庇・雨樋・枝の位置を現地で撮影し、日付を残す
- 必要に応じ土地家屋調査士に境界と構造物の位置関係を確認する
- 誰が設置した物か、修繕・管理してきたのは誰かを資料で確かめる
- 建築・再建築、修繕、解体、利用面積に影響があるかを確認する
境界そのものが未確定の場合は、境界未確定の土地を売る際の測量・隣地確認も参考にしてください。

越境覚書を作る場合の確認項目
隣地所有者と現状を認め、次に建替え・改修・撤去するときの対応などを書面で定めることがあります。これは越境のすべてを自動的に解決する書類ではなく、当事者の合意内容が重要です。
| 記載を検討する事項 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対象の特定 | 塀・雨樋・枝・配管等の位置、写真、図面、寸法 |
| 認識の一致 | どの構造物が誰の所有で、どちらへ越境しているか |
| 是正の時期 | 直ちに解消するか、建替え・大規模修繕時に対応するか |
| 費用と方法 | 撤去・移設・補修・立入りの費用を誰が負担するか |
| 将来の所有者 | 売買後の買主や隣地の新所有者への説明・承継の扱い |
| 書面の保管 | 原本・写しの保管、売買契約書との整合 |
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越境覚書は、署名した当事者の間で交わす合意です。「次の所有者にも承継する」と書くだけで、将来の買主や隣地の新所有者を当然に拘束できるとは限りません。売買時に誰が何を承諾し、どの書面を引き継ぐかを確認してください。再建築・建替えの自由度に影響する場合は、弁護士、土地家屋調査士、担当宅建業者と文案を検討します。

覚書を確認するときの記載例|「将来撤去する」だけで終わらせない
たとえば「隣地の雨樋がこちらへ出ているので、次の改修で直す」という合意でも、どの雨樋か・どの工事をしたときか・誰が費用を負担するかが抜けていると、後で認識が食い違います。次の項目を、実際の図面と照らして埋めてください。
なお、越境部分の存置に合意することと、土地の境界や所有権を変更することは別です。「いつか直す」という合意では買主の直近の建築計画に間に合わない場合があるため、契約前に設計者にも確認してもらいます。
隣地の木の枝や根が越境しているとき
隣地の竹木の枝が境界を越えている場合は、まず竹木の所有者に切除を求めるのが原則です。2023年4月1日施行の改正により、次のいずれかに当たる場合は、越境された土地の所有者が枝を切り取ることもできます(民法233条3項)。
- 切除を催告したのに、所有者が相当の期間内に切除しない。
- 竹木の所有者、またはその所在を知ることができない。
- 急迫の事情がある。
「連絡しても返事がない」だけで、直ちに所有者不明と扱えるわけではありません。催告や調査の経緯を残し、必要以上に切り過ぎないようにします。詳しくは大阪市による改正ルールの解説も確認してください。
越境した根については、民法233条4項で自ら切り取ることができるとされています。ただし、根を切って樹木や塀の安全性に影響する場合もあります。枝の切除条件、工事範囲や費用に争いがあるときは、作業前に弁護士と専門業者へ確認してください。
売却条件へ反映する順番
- ①越境物・境界・所有者を調査し、事実と推測を区別して一覧化
- ②修理・撤去が必要なら複数の専門業者に工事内容と費用を確認
- ③隣地との協議を行い、合意事項があれば写真・図面付きの書面に
- ④買主へ現況、未解決事項、利用への影響を事前説明
- ⑤重要事項説明書・売買契約書・物件状況報告書の記載をそろえ、引渡しまでの対応と費用負担を明確化
例えば『塀を売主が撤去して更地渡し』と合意したのに撤去ができない場合、契約上の問題につながります。『現状のまま引き渡す』場合も、何が現状として説明されたかが重要です。「現状有姿」と書くだけで、説明していない越境や約束した是正への責任が一律に免除されるわけではありません。一般的な契約不適合責任については中古住宅の不具合と告知書の記事を参照してください。

調査・覚書・撤去の費用はどう見積もる?
費用は「越境が何センチか」だけでは決まりません。既存の測量図が使えるか、隣地との調整が必要か、足場・掘削・復旧が伴うかで変わります。金額だけを比べる前に、見積りに含まれる作業と含まれない作業をそろえましょう。
| 費用の項目 | 主な確認先 | 見積り前に伝えること |
|---|---|---|
| 位置の調査・測量 | 土地家屋調査士 | 図面の有無、境界標、立会いの範囲、成果図面に越境物を表示するか |
| 合意内容の検討 | 弁護士・担当宅建業者 | 覚書の文案確認だけか、隣地との交渉や再締結の支援まで含むか |
| 撤去・移設・剪定 | 対象工事の専門業者 | 足場・養生・処分・復旧費、安全対策、隣地を使う必要があるか |
費用負担は、対象物の所有者、従来の合意、工事が必要になった経緯などを踏まえて調整します。売却するから売主が全部払う、越境しているから隣地が全部払う、と一律には決められません。実際に先払いする人と、最終的に負担する人も書面で確認してください。
売却方法は、査定額から調査・工事・その他の売却費用を差し引いた手取りと、引渡しまでの期間を合わせて比較します。価格差だけを見て高額な工事を先行させず、工事前に不動産会社と買主候補の利用計画を確認するのが現実的です。
越境物がある土地を売る3つの進め方
越境物が見つかっても、「撤去してからでないと売れない」とは限りません。売却価格を考える前に、買主の利用目的に支障があるか、誰がいつ対応できるかを確認します。状況に応じて、次の3つを比較するのが実務的です。
選択肢 1
事前に是正して売る
撤去・移設が可能で、工事内容や費用を整理できる場合。工期と引渡し予定の整合を確認します。
選択肢 2
現況を説明して売る
越境の位置と影響を開示し、覚書や売買条件で対応範囲を整理。買主の利用計画・融資判断にも配慮します。
選択肢 3
買取も含めて比較する
是正まで時間がかかる場合の選択肢。ただし買取価格や対応可能範囲は会社と物件により異なります。
価格への影響は越境幅だけで決まりません。建築計画を変更する必要があるか、撤去の見込みが立つか、取引条件を明確にできるかが重要です。査定額と実際の売出価格を考える際は、査定額と売出価格の違いも参考にしてください。
契約前に確認する4つの軸|越境対応チェックシート
越境の相談では、事実関係を4つの軸に整理すると確認漏れを減らせます。越境幅の数字だけで結論を出さず、買主の建築・融資・引渡しに何が影響するかを確かめます。
こちらから隣地へ/隣地からこちらへ/双方/未確認
設置者・管理者・共有物かを資料と聞き取りで確認
再建築・外構・排水・安全・融資に影響があるか
誰が・いつ・何を・どの費用で行うか、合意の有無
この4軸を埋められない部分が「調査中」の項目です。不明なことを無理に断定せず、図面・写真・関係者の説明・現地調査の結果を整理してから売買条件に反映します。必要資料は不動産売却の必要書類一覧も確認してください。
よくある質問
Q.隣地が越境を認めなければ売却できませんか?
必ず売却不能になるわけではありません。ただし買主の融資・建築計画・利用目的に影響する場合があり、事実関係と調整状況を説明したうえで条件を協議します。
Q.古いブロック塀は誰のものですか?
外観や位置だけで確定できません。築造経緯・費用負担・売買契約書・測量図、隣地との合意を確認し、不明なら専門家に相談します。
Q.覚書があれば測量は不要ですか?
覚書の内容と目的によります。構造物の位置を正確に特定するには測量が必要な場合もあり、覚書のみで境界そのものが確定するわけではありません。
Q.越境物を撤去せず、現況のまま売ることはできますか?
可能な場合があります。ただし買主が越境の範囲と利用上の影響を理解していること、是正の時期や費用負担などの取引条件を明確にすることが重要です。購入予定者の建築計画や金融機関の条件によっては調整が必要です。
Q.越境覚書は誰に相談して作ればよいですか?
位置・境界の確認は土地家屋調査士、法的な権利義務や文案の判断は弁護士、売買契約条件の調整は担当宅建業者など、それぞれの専門性に応じて確認します。ひな形をそのまま使うのではなく、対象を写真・図面で特定してください。
Q.越境物があると土地の価格は何割下がりますか?
一律の値下がり率はありません。工事の可否・費用だけでなく、買主が予定する建築や融資への影響、隣地との合意状況で評価が変わります。「是正して売る場合」と「現況で売る場合」を同じ資料で査定してもらい、手取りと期間を比較してください。
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本記事は一般的な情報です。個別の契約不適合責任・説明義務・法律上の判断は、売買の目的・合意内容・事実関係により変わります。契約書・現況資料を使って担当専門家へ相談してください。
